なぜオークション研究がノーベル賞を受賞したのか?(第5回|全5回)安田洋祐

関連情報

オークション理論の関連記事や文献については、経済セミナー編集部によるnoteのまとめが包括的で読みやすく、とても参考になります。

・2020年ノーベル経済学賞はオークション理論![1]

[1] https://note.com/keisemi/n/na5e542001fa1 

私がslideshareで公開しているオークションに関するスライド資料もご紹介します。文字情報が中心で少し読みにくいかもしれませんが、オークションの理論と実践の大まかな流れが追えると思います。ご活用下さい。

・オークションの仕組み[2]

[2] https://www.slideshare.net/YosukeYasuda1/ss-198857941 

過去に早稲田大学オープンカレッジ「ゲーム理論とマーケットデザイン入門」(全8回)[3]の中で行った関連講義の音声も公開しています。

・Lec7|オークションの理論と実践(2013年6月19日)[4]

[3] https://sites.google.com/site/yosukeyasuda/jp/lecture/wo13 

[4] https://note.com/yagena/n/n4f5eb749618f 

毎週木曜20時
The Night School

講師:安田洋祐

プリンストン大学
大学院経済学博士課程修了(Ph.D.)。

東京大学経済学部では大内兵衛賞を受賞し卒業生総代。朝日新聞論壇委員。

主な業績に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(編著 NTT出版)、“Resolving Conflicting Preferences in School Choice: The Boston Mechanism Reconsidered”(with Abdulkadiroğlu and Che) American Economic Review, “Oligopolistic Equilibrium and Financial Constraints”(with Bevia and Corchon) RAND Journal of Economicsなど

Twitter: @yagena

関連書籍

オークションの理論と実践について概要が掴める入門書として、手前味噌ではありますが、私が監訳した『入門 オークション 市場をデザインする経済学』[5](ハバード&パーシュ)を挙げたいです。数式は全く登場しません!

[5] https://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002412.html  

本書に寄せた解説記事をnoteに転載しました。一見すると地味な印象に映るかもしれないオークションというトピックが、なぜ経済学において大きな注目を集め、精力的に研究され続けてきたのか、という背景について俯瞰的に整理しています。オークション研究の学術的意義について関心のある方はぜひご覧下さい。

・入門オークション:監訳者「解説」[6]

[6] https://note.com/yagena/n/nebe89584efee 

オークション分野で蓄積された研究知見のビジネスへの活用については、なんと言ってもEDIの共同創業者である坂井さんによる『メカニズムデザインで勝つ ミクロ経済学のビジネス活用』[7]が激しくおすすめです。ワークショップでの講演をもとにしていて、読み物としても抜群に面白いです。

[7] https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/35860 

オークションは情報科学の分野でも積極的に研究されています。主に複数のアイテムを割り当てる複数財オークションに関して、インセンティブ設計の難しさ(→経済学)と望ましい結果を計算する難しさ(→情報科学)をどちらも考慮するような、学際的な研究も進められてきました。情報科学分野の大御所である九州大学の横尾さんが書かれた『オークション理論の基礎 ゲーム理論と情報科学の先端領域』[8]は、非経済学系(特に工学系)の読者でも非常に読みやすい優れた入門書としておすすめです。

[8] https://www.tdupress.jp/book/b349928.html 

受賞者たちが大きく貢献した電波オークションをはじめ、現実のオークション設計について関心がある方は、洋書にはなりますが、オックスフォード大学のPaul Klemperer教授による『Auctions: Theory and Practice』[9]もぜひお薦めしたいです。著者はイギリスにおける電波オークションの設計を主導した超一流の経済学者です。本書は彼の研究論文を集めた論文集ですが、あまりテクニカルではなく英語自体もとても読みやすいです。

[9] https://press.princeton.edu/books/paperback/9780691119250/auctions 

オークション理論は、2012年にノーベル経済学賞を受賞したマッチング理論と研究領域がかなりオーバーラップしており、近年では両者(の実践的な側面)を合わせて「マーケットデザイン」と呼ぶことも増えてきました。邦書の優れた入門書もすでに何冊か出版されており、坂井さんの『マーケットデザイン 最先端の実用的な経済学』[10]は、シンプルな例を用いて直感的に様々なマーケットデザインの仕組みや応用事例を掴むことができます。

[10] https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480067340/ 

公立はこだて未来大学の川越さんによる『マーケット・デザイン オークションとマッチングの経済学』[11]は、マーケットデザインの理論に関する経済思想・学説史的な背景や、オークション実験の豊富な解説など、類書ではあまり扱われていないトピックの記述も充実している希少な一冊です。この分野の学術的な意義・重要性をきちんと理解したい方に特に向いているように思います。

[11] https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000195555 

学部上級レベルの本格的なテキストとして、今年翻訳書が出た『マーケットデザイン オークションとマッチングの理論・実践』[12]も非常に良い内容だと思います。英語にはなりますが、著者であるGuillaume Haeringer教授のウェブサイト[13]から、各章の講義スライド(pdfだけでなく、なんとtexファイルまで公開されています!)をダウンロードできるのもありがたいです。

[12] https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-32871-8 

[13] https://sites.google.com/site/guillaumehaeringer/market-design 

本格的にオークション理論を研究したい、という大学院生以上の方は、この分野の第一人者であるペンシルベニア州立大学のVijay Krishna教授による『Auction Theory (2nd edition)』[14]を読みましょう。非常に簡潔かつエレガントに書かれた名著で、必読書です。おととし待望の翻訳書『オークション理論』[15]も出版されましたが、後半の複数財パートについてはこの日本版では全くカバーされていないので注意が必要です。

[14] https://www.elsevier.com/books/auction-theory/krishna/978-0-12-374507-1 

[15] https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-23761-4 

受賞者であるミルグロム教授自身も、オークションをテーマにした上級レベルのテキスト『オークション 理論とデザイン』[16]を執筆しています。ただ、内容がかなりテクニカルな上、前述のKrishna教授の定番テキストと違い分析手法も独特なので、好みが分かれる一冊かもしれません。とは言え、様々な現実のオークションの制度的背景について語られている「第1章 さあ、始めよう」は、この分野に関心があるならぜひ抑えておきたい内容です。

[16] https://str.toyokeizai.net/books/9784492313855/ 

ミルグロム教授は、最近のオークション設計の話題について、2017年にコンパクトな書籍『Discovering Prices: Auction Design in Markets with Complex Constraints』[17]も出版しています。実は、私が監訳者となり現在こちらの本を翻訳作業中です。テクニカルで理解が難しい箇所も少なくないのですが、ミルグロム教授にしか書けない内容がぎっしり詰まった良書ですので、ぜひ邦訳もご期待ください。[17] https://cup.columbia.edu/book/discovering-prices/9780231175999

おまけ

受賞者のミルグロム、ウィルソン両教授に対して、教え子や共同研究者からも祝福の声が多数上がっています。特に印象的だった二人の記事を、その一部を引用しながらご紹介させて頂きます。

・Remarks on Paul Milgrom[18]

[18] https://digitopoly.org/2020/10/12/remarks-on-paul-milgrom/ 

ミルグロム教授の教え子であるJoshua Gans教授(トロント大学)が、2013年に開催されたミルグロム教授の65歳記念パーティーで自身が行ったスピーチを振り返りながら、応用理論家としての彼の偉大さを語っています。

Take a look here at his most highly cited works. With just a couple of exceptions, it is all applied theory. And moreover, when you look at where those citations are coming from it is not economics. It is management, strategy and finance. In other words, Paul is the most significant theorist in business and management, today, and possibly ever.

・David Kreps Lauds 2020 Nobel Laureate Robert Wilson[19]

[19] https://www.gsb.stanford.edu/experience/news-history/david-kreps-lauds-2020-nobel-laureate-robert-wilson 

ウィルソン教授の同僚かつ共著者であり、自身もノーベル経済学賞の有力候補であるDavid Kreps教授(スタンフォード大学)が、「最も偉大な経済学者」[Greatest Economist]であるウィルソン教授の功績を称えています。個人的には、記事内で引用されているSonnenschein教授の名言にもシビれました。

[T]his short appreciation is about Bob Wilson, whose own work is less wide-ranging than Paul’s but whose impact on the discipline of economics, in my opinion, puts him in the company of giants such as Ken Arrow and Paul Samuelson: Bob is, as much as anyone, the founder of the “School of Economic Theory as Engineering.”