集団的決定と会議の経済学(坂井豊貴)
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【運営からのコメント】
企業での意思決定とは、とても奥深いテーマです。意思決定の手法によって、結果が変わる。「正しい確率」を高めていくために、会議はどう進めていくべきか。レーティングなどでも活用する意見の集約方法とは、どのようなものがあるのか。欧米での膨大な研究から、今すぐに活用できる知見の習得を目指します。
【講師紹介】
慶應義塾大学経済学部 教授 。学位:Ph.D. University of Rochester。
投票システム・暗号通貨・オークション・マッチング・レーティングなどの設計を研究。現在は、さまざまな企業のサービス開発や刷新に深くコミットして、ビジネス活用に注力しています。
著書『多数決を疑う』(岩波新書、高校国語の教科書に掲載)、『マーケットデザイン』(ちくま新書)ほか。
【講師コメント】
人間の集団は人間ではありません。人工物という意味では機械に近い。あたかも生物であるかのように動く設計が重要です。そのような設計はどうすればよいか。意思決定を行う会議の最適な構成とはいかなるものか。学知を総動員して考えていきます。
【レベル】
初級~中級
【キーワード】
経営層・管理職・中堅・若手・起業家・営業・収益拡大・業務効率化・経営管理・ブランディング・戦略
【キーワード】
社会的選択理論・制度設計
【この講義で目指すこと】
・意思決定に関連する基本的考え方及び各意思決定方法の課題を習得
・企業成長に必要な集団的意思決定の基礎を習得
・Web3.0やDAOなどに必要な基礎知識を習得
【お薦め】
・マネジメント・管理部門など経営の意思決定に関与している方
・クリプト関連ビジネス創出を検討している方
・レーティング・プラットフォーム関連のビジネスを検討している方
第1回「決め方次第で結果が変わる」
人間の集団は、人間たちが織りなす人工物と考えることができます。この人工物の作動を決めるのが、その構成員による集団的決定です。
集団的決定で難しい点は、様々な手法があり、どれを用いるかで結果が大きく異なることです。
どんな時に、どの手法を用いればよいか、それぞれの手法について学びます。例えば多数決、決選投票、ボルダルールなどです。
また、会議においては、審議の順番も結果に影響します。アメリカ議会でのパウエル修正案をめぐる混乱など、審議の順番が結果を大きく変えた例を紹介します。
第2回「優れた決め方の発明」
意思決定の方式として、近年注目が集まるマジョリティジャッジメントを主に解説します。
この方式は、多数決がもつ主要な欠陥である「票の割れ」や「戦略的操作」の問題に対して、非常に頑健なことが知られています。
この手法のもとでは、参加者はそれぞれの選択肢への絶対評価をすべて提出するため、集まったデータを分析すると、参加者や選択肢についての様々な情報を求めることができます。
実用例として、ブロックチェーン企業で用いたケースと分析結果を紹介します。
第3回「集団が個人より優れた判断をするうえで、何が決定的に重要か」
多数派の判断は、一人の個人の判断とどう異なるのでしょうか。コンドルセ陪審定理は、一定の条件の下では、多数派のほうが「正しい確率」が高いことを保障しています。
また、近年の多くの実験研究では、集団は個人よりもリスク中立的な判断をすることが確認されています。
しかし、集団がそのような判断をするためには、各人が「独立性」の条件を満たしていなければなりません。
これは他者の意見に無思考に追従したり、空気に流されたりしないという条件です。
第4回「色んな観点や結果をまとめると結局『最適会議』とはどのようなものか?」
この講義では前回までの内容を振り返りながら、最適な会議のあり方を探っていきます。
第一に、各人の独立性(他者に追従しない、空気に流されない)はきわめて重要です。
第二に、各人に手抜きをさせない動機付けが必要です。
第三に、人数は多すぎても少なすぎてもいけません。
最適な会議とはいかなるものか、考えていきます。