境界が曖昧になるチームとクリエイティビティ(稲水伸行)
境界が曖昧になるチームとクリエイティビティ(稲水伸行)
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【運営からのコメント】 多様なバックグラウンドのメンバー・働き方が異なるメンバーといったチームで働くことが多くなった中、どのようにチームのクリエイティビティを上げるか。事例やデータを用いて、クリエイティブティの高め方を学びます。
【講師紹介】
東京大学大学院経済学研究科准教授。学位:博士(経済学)(東京大学)。
研究分野は、経営科学、経営組織論、組織行動論。職場の物理的環境や情報技術の導入、人事施策がどのようにして職場の広い意味での成果(生産性やクリエイティビティ)につながるのかについて研究している。過去に、一橋ビジネスレビューで「クリエイティビティの経営学」を連載。主な著書に、『流動化する組織の意思決定』(組織学会高宮賞・著作部門を受賞)がある。
【講師コメント】
昨今、チームで仕事をすることは当たり前となっていますが、チームで仕事をするにしてもメンバーの入れ替わりが激しくなっていて、各メンバーが複数のプロジェクトを掛け持ちしていることは珍しくありません。
また、テレワークの普及に伴いヴァーチャルで一緒に仕事をするということも多くなってきています。
そのため、チームの境界が曖昧になってきていると言われています。このような変化の中でクリエイティビティを高めるには、どうすれば良いでしょうか。
確かに、社会ネットワーク理論では、このようなチームのあり方の変化はクリエイティビティを高めると考えられています。一方で、組織のアテンション(注意)に着目する研究では、このような変化は必ずしもクリエイティビティを高めるとは限りません。
本講義では、こうした見解の対立を解消するために、あいまい性下の組織の意思決定モデルであるゴミ箱モデルに着目します。ゴミ箱モデルのシミュレーション結果や、行動データを用いた実証研究を紹介しつつ、境界が曖昧なチームにおいてクリエイティビティを高めるための条件を考えます。
【レベル】
初級~中級
【キーワード】
生産性・マネジメント・経営科学・経営組織
【分野】
イノベーション・経営学
【この講義で目指すこと】
・境界があいまいになるチームのあり方の理解
・ゴミ箱モデルの理解
・クリエイティビティを高める考え方の涵養
【お薦め】
・チームを率いるマネージャーや管理職
・組織をイノベーティブな組織に改革したい経営者
・新しいチームを構築しようとしているアントレプレナー
第1回「境界が曖昧になるチーム」
まず、日本マイクロソフト社の働き方改革の事例をもとに、チームの境界が曖昧になってきていることを紹介します。
このような状況では、チームは「ダイナミックに変化する参加メンバーの結節点(DPH: Dynamic Participation Hub)」として捉えられます。DPHとしてのチームでは、個々の参加メンバーはあたかもブローカー(異なるコミュニティを橋渡しする仲介者)のような役割を果たすことが期待されます。その意味では、社会ネットワーク理論におけるブローカーに関する議論が参考になります。
社会ネットワークのブローカーとの間にクリエイティビティと正の関係があることが確認されてきました。一方で、DPHとしてのチームでは、個々の参加メンバーのアテンション(注意)のマネジメントも重要となります。
第1回では、アテンションの幅を広げすぎることの危険性についても紹介します。その上で、DPHとしてのチームでクリエイティビティを高めるにはある種のトレードオフがあることを問題提起します。
第2回「ゴミ箱モデル」
第1回の講義で触れたトレードオフを考える上で示唆的なのが、あいまい性下の組織の意思決定モデルである「ゴミ箱モデル」です。
このモデルは、組織の中を選択機会、問題、解、意思決定者がそれぞれ独立に流れており、あるタイミングで偶然これらが結びついた時に意思決定(問題解決)が行われると考えます。
第2回では、ゴミ箱モデルとそのシミュレーションの結果について解説を行います。
特に、DPH化が進む中でクリエイティビティを高めるために必要な条件は何か、検討します。さらに、ある企業における従業員の行動データを用いた実証についても紹介します。